「特定の従業員間でトラブルが続いている」
「特定の従業員が問題行動を起こしがちである」
「働く環境を変えて従業員のパフォーマンスを改善したい」

 従業員の労働環境や状況を変えることで、潜在化・顕在化している問題を改善したいと思う場合に「配転命令」がなされることがあります。「配転」とは、職務内容あるいは勤務地が変更される場合で、長期にわたるものをいいます。

 日本の企業では、一般的に長期雇用される環境下において、職業能力の育成や人材の育成と定着のために配転が広範囲に行われ、過去の判例を見ても、配転を広く認める傾向にあると言われています。配転は企業の人事権の行使として業務命令によって行われるものであり、従業員がそれを拒否する場合には業務命令違反として懲戒処分の対象となります。そのため、社員の配置・配転については、会社側はかなり大きな権限を持っていると言えます。

 しかし、配転が配転命令権の範囲内であっても、権利濫用にあたる場合は無効となります。
 具体的に権利濫用にあたることとして、判例は以下の3つを指し示しています。
① 業務上の必要性が存しないとき
② 転勤命令が不当な動機・目的をもってなされたとき(業務上の必要性が存する場合であっても)
③ 労働者に対して、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき

 つまり、配転命令権が権利濫用にあたるかどうかは、当該転勤命令の業務上の必要性と、本人の受ける生活上の不利益との比較衡量に基づいて判断されます。

 そのため、不用意に配転を行うことで、従業員側から労働審判や訴訟を提起される可能性もあり、従業員の配転を検討する場合は、労働分野に詳しい弁護士に相談のうえ進めることをお勧めいたします。