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再生・倒産
企業経営をされている方の多くは、平時においてどのように業績を上げ、業務を運営するのか、という点については、非常によく精通しておられます。しかし、会社がいよいよ資金繰りに困った時や会社が経営危機に瀕した際にどうすれば良いのか、ということに関して正しい知識をお持ちの経営者は少ないのが実情です。また、正しい知識をお持ちでも、会社の危機にあって冷静な判断ができないケースも見受けられます。
営業業績を上げるご経験が豊富で熱心な経営者ほど、経営危機に陥っているのに、更に悪徳業者等から無茶な借金をしてでも、商品を仕入れて販売する、といったことを選択され、それが後に命取りになってしまうケースもあるのです。
資金繰りや経営危機に陥った時には、専門家に相談することで、次のような選択肢が得られます。
1)リスケジューリングによる自主再建
会社の再建という場面では「金融機関への返済は絶対!」というのは間違いである場合もあります。客観的な事実に基づいて、然るべき交渉を行えば、金融機関は返済を猶予してくれることもあります。
2)事業・人員の整理・事業再編
不採算事業からの撤退やリストラ(人員削減)、会社分割や事業譲渡などにより事業再編を行う方法です。
3)民事再生法の活用
1999年に成立した民事再生法は、未だに「倒産扱いされる」等の誤解が多いのですが、全国的に実績があり、多くのメリットがある会社再建の方法です。
4)会社破産(法人破産)
あらゆる選択肢を検討し、それでも再建が不可能と判断された場合は、会社破産を選択します。ご自身やご家族のためにも、責任を持って破産手続きを進めることが必要な場合もあります。
早い段階でご相談いただいた場合は、再生の道が開かれことも多いのです。厳しい経営状況をつまびらかにするのは気が進まないお気持ちは良く分かりますが、取り返しがつかない状況に陥る前に、できるだけ早い段階でご相談ください。
リスケジューリングによる自主再建
リスケジューリング(リスケ)とは、金融機関との交渉によって、融資を受ける際に約束した支払条件を、緩く変更することです。具体的には、支払い期限を延期したり、月々の支払額を減額したりすることです。
経営者の中には、金融機関への返済を絶対視するあまり、仕入先への支払い止めてでも金融機関への返済を優先したり、悪徳業者等から高利の借金をしてでも銀行に返済する、などという方もおられます。
もちろん、金融機関への返済は大切ですが、これでは状況をますます悪化させてしまいます。
金融機関との間でリスケができれば、資金繰りに余裕を持つことができるようになります。
もちろん、リスケは緊急的な猶予期間を確保しているに過ぎませんので、猶予期間の間に過剰な負債を整理したり、売上の不振を解決しなければなりません。
金融円滑化法は平成25年3月に終了し、以前ほど簡単にはリスケに応じてはもらえなくなっていますが、円滑化法の実施前も終了後も、客観的な事実に基づいて、きちんとした再生計画を提示すれば、リスケに応じてもらえるケースも多々あるのです。
当然、「お願いすれば、待ってくれる」という訳ではありませんし、実態を隠して、嘘で塗り固めた計画を見せても、一発で見破られて、逆に不信感を持たれてしまいます。
このような場合は、専門家である弁護士にご相談いただければ、客観的に状況を把握した上で、皆様と一緒に納得性のある再生計画を作り上げ、金融機関とリスケの交渉を行います。
私的再建
私的再建とは法的手続きによらずに、債権者と債権債務について合意して、再建する方法です。私的整理とも言いますが、整理するのは「債務」であって、「会社」を整理するのではありません。
前項で述べたリスケジューリングも私的再建のひとつですが、私的再建では、金融機関(団)との交渉で、返済猶予・一時的据置き、金利の減額、有利子負債のカットで資金繰りをつけ、その間に経費節減等、経営を合理化して再建する等、様々な方法が可能です。
民事再生法が施行以来、弁護士の中にはいきなり「民事再生」を勧める向きもありますが、まずは様々なメリットがある私的再建を検討すべきです。
私的再建のメリット
私的再建の最大のメリットは、なんといっても「信用不安」を回避できることです。
民事再生などの法的手続きの場合、全債権者に一律に裁判所から通知が届くため、その会社が法的手続きを選択したことが明らかになります。また、「民事再生」などの法的手続きは、世間では(これはまったくの誤解なのですが)倒産に近い受け止め方をされることが多く、悪い風評が流れ、結果として事業価値が傷つくことが起こりがちです。
全債権者と協議して、その譲歩、猶予等の協力の下に事業計画を遂行せざるを得ない場合はやむを得ませんが、多くの会社は、ある大口債券者である金融機関(団)とのみ交渉し、協力を取り付けられれば、その他の仕入先や取引先にまで、経営の逼迫状況を説明しなくても済むことが多いのです。
私的再建のデメリット
法的手続きでは、多数決の原理により少数の反対者にも数の力によって対処可能ですが、私的再建の場合、個別的な債権者との話し合い・合意ですから、大口の債権者や再建に不可欠な事業用財産に抵当権を持つ債権者の1人が反対している場合、不可能となってしまいます。
また、私的整理は裁判所の関与・監督を受けないため、裁判所に債務弁済禁止等の保全処分を求める制度や債権者が抵当権の行使などに出た場合、これに対する対抗措置が備わっていないというデメリットもあります
当事務所のスタンス
当事務所では、例え会社が危機に陥ったとしても、可能な限り個別に協力を取り付けて、自力で回復する私的再建をとるべきだと考えています。しかしながら、私的再建のデメリットを克服できない場合では、私的再建で進めることでかえって被害を拡大させてしまいます。
そのような場合は、代理人弁護士は、法的再建を用いて被害を防止することが使命と考えます。
民事再生
民事再生は、債務超過などにより経営危機にある企業が、裁判所の関与の下で再建を図る手続です。
1999年に成立した民事再生法は、未だに「倒産扱いされる」等の誤解が多いのですが、全国的に実績があり、多くのメリットがある会社再建の方法です。
民事再生の最大のメリットは、事業にもよりますが債権者の同意を得られれば、債務を大幅に圧縮できる場合があることです。圧縮後の債務については、原則として10年以内に圧縮された債務を延べ払いする方法をとります。当然、債務が大幅に圧縮されれば、日々の返済負担は軽減され、資金繰りは相当程度楽になります。
また、民事再生の場合、私的再建と違って、債権者の過半数が賛成すれば再建計画が成立しますので、債権者の中にある程度の反対者がいても再建が可能になります。
民事再生手続における再生計画案のポイントは、第一に「営業利益段階で黒字計上できるかどうか」です。つまり、仮に無借金であるとしたら、会社経営は大丈夫か、それとも駄目か、です。
もちろん、これは現状で黒字計上できるかどうかだけでなく、経費節減やリストラなどで、近い将来黒字計上できるかどうか、といった判断も含まれます。これができるのであれば、民事再生法を活用して、再生できる可能性があります。
とにかく、早い段階でご相談いただいた場合は、再生の道が開かれことも多いのです。厳しい経営状況をつまびらかにするのは気が進まないお気持ちは良く分かりますが、取り返しがつかない状況に陥る前に、できるだけ早い段階でご相談ください。
会社破産(法人破産)
経営者としては、最後まで会社再建のために頑張りたいお気持ちは良く分かります。もちろん、私たちも、企業再生のご相談を頂いた場合、最後まで貴社の再建のために全力を尽くします。
しかしながら、状況によっては、どうしても再建が困難な場合もあります。そのような場合は、責任を持って会社を清算することも、経営者の大切な役割です。
そして、私たち弁護士は、そのような場合も、経営者に寄り添って、経営者やご家族、従業員の方の権利を最大限保護し、人生の再スタートが切れるようにお手伝いします。
一度、破産してしまうと全てがお終いという訳ではありません。会社法上も、破産は取締役の欠格事由から除外されています。破産しても、再び起業される方もおられます。
会社が破産手続きを選択すると、裁判所から選任された破産管財人が会社財産を債権者に公平に配当します。
債権者が経営者やご家族に直接請求したりすることはできなくなりますし、一部の債権者だけが強引に有利な分配を受け取ることもできなくなります。
破産手続を選択する場合、従業員も全員失職することになりますが、給料や退職金などの労働債権を先に確保するなどして、従業員等に最低限の配慮をすることができます。
破産を決断することは経営者にとって、もちろん、苦渋の決断であるとは思いますが、そうした状況を放置しても、問題が解決されることはないどころか、「自殺」や「夜逃げ」や「家族の離散」といった最悪の事態を招いてしまうこともあるのです。
あなたの会社が破産の危機に瀕している場合、あなた自身が精神的にも相当にきつい思いをされている筈です。1人で悩んでも答えが出ないばかりか、状況はますます悪化することが多々あります。
第三者に相談するだけでも精神的に相当楽になることもあります。弁護士は当然、守秘義務を負っていますので、相談していることを他の誰かに知られることはありません。
あなたとあなたのご家族、従業員のためにも、一刻も早く、専門家である弁護士に相談し、客観的に状況を分析してもらった上で、然るべき措置を取ることをお奨めします。
M&A・企業再編
企業再編において、重要で有用な手法として、定着をしたM&Aですが、M&Aをした結果、企業の経営状況が悪化したり、再度分裂してしまったり、相乗効果を得ることができなかったというように失敗をしてしまうケースは、多いと考えられます。また、M&Aの手法が近年急増しており、より複雑化していると考えられます。
M&Aが成功しにくいという要因は、まだまだ日本の市場に定着していない手法であるという点や、日本人の気質にあっていないといったように様々な要因が考えられますが、その中に一つに、専門家の能力不足という部分があると感じています。
M&Aや企業再編を成功させるには、最先端の知識や豊富な経験、創造力、法的手法、私的手法、業種の知識が必要になりますし、グローバル企業とM&Aを行う場合には、クロスボーダー取引の実績や経験も必要になります。そのため、どの事務所でもできる事柄ではない、と感じています。
M&Aをお考えの場合、幅広い知識や経験、企業の成長戦略の立案、交渉業務、様々な専門家との連携といったように、あまりに複雑な為、M&Aや企業再編を経験したことのある弁護士がいなければ、成功させることは非常に困難だと考えられます。
当事務所は、難易度の高いM&Aや企業再編の実績が豊富であり、対応できる法律の幅も広いため、確実にM&Aを成功に導くことができると考えております。お気軽にご相談下さい。